インド料理の本体はスパイスの種類よりテンパリングである
結論。スパイスを買うより先に、油で香りを出す技術を覚える
インド料理を始める人は、まずスパイスの種類を増やそうとする。クミン、コリアンダー、ターメリック、カルダモン、クローブ、フェヌグリーク。棚が賑やかになる。しかし本当に味を変えるのは、種類の数より使い方である。
特に重要なのがテンパリング。ホールスパイスを油で熱し、香りを油に移す技法だ。これをやるだけで、同じクミンでも粉で入れるのとは別物になる。
香りは水より油に乗る
スパイスの香り成分の多くは油に溶けやすい。だから、煮汁に粉を入れるより、油で熱してから料理に混ぜる方が香りが立つ。クミンシード、マスタードシード、カレーリーフ、乾燥唐辛子、フェヌグリーク。このあたりは油と相性がいい。
やり方は単純。フライパンに油を入れ、中火で温める。クミンシードを小さじ1入れる。泡が立ち、香りが出たら玉ねぎや具材を入れる。これだけ。マスタードシードなら、パチパチ弾けたら次へ進む。
和食に使うなら「仕上げテンパリング」が強い
和食をインド化するとき、最初から全部をカレーにしなくていい。完成した料理に、最後だけテンパリングした油をかける方法がある。
味噌汁にクミン油。冷奴にマスタードシード油。焼きなすにカレーリーフ油。鯖味噌にフェヌグリークと唐辛子の油。これは料理を壊しにくい。和食の骨格を残したまま、香りのレイヤーだけインドにできる。
焦がすと終わる
テンパリングの失敗はだいたい焦がしすぎ。スパイスは小さいので、油が熱すぎると一瞬で焦げる。焦げたクミンは苦い。焦げたマスタードシードも苦い。初心者は中火から始め、香りが立ったらすぐ次の具材を入れて温度を下げるのが安全。
もう一つの失敗は、粉スパイスをホールスパイスと同じ感覚で強火にかけること。パウダーは焦げやすい。玉ねぎやトマトの水分があるところに入れる方が安全だ。
テンパリングは香りの「だし」である
日本料理でだしを取ると、湯に昆布や鰹節のうま味が移る。テンパリングでは、油にスパイスの香りが移る。水のだしと油のだし。そう考えると急にわかりやすい。
味噌汁にだしがなければ物足りないように、インド料理も油の香りがないと平らになる。粉を混ぜただけでは、香りが料理の上に乗らない。油を通すことで、スパイスが料理全体に広がる。
WA-INDOでの実践
肉じゃがなら、仕上げにクミンとマスタードシードの油をかける。だし巻きなら、卵液にターメリックを少し入れ、焼き上げにクミン油。ざるそばなら、つゆにクミンを直接入れるより、唐辛子とマスタードの油を少量たらす方が面白い。
インド化は、全部を煮込むことではない。香りの回路を一本追加することでも成立する。
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