ネパール、バングラデシュ、スリランカはインド料理と何が違うか
結論。隣国料理はインド料理の周辺ではなく、それぞれ別の中心を持っている
ネパール、バングラデシュ、スリランカの料理を「だいたいインド料理っぽい」と見ると、かなりもったいない。確かに米、豆、スパイス、宗教文化、交易の重なりはある。しかし、それぞれの料理は地形と歴史が違う。
ネパールは山とダルバート。バングラデシュは川と魚とマスタード。スリランカは島とココナッツと酸味。インドと似ている部分より、「何を主食にし、何で油脂を作り、何をタンパク源にするか」の差を見ると急に解像度が上がる。
ネパール。山のダルバート文化
ネパール料理の中心はダルバート。米、豆のスープ、野菜のおかず、漬物、時に肉。この構造は北インドのターリーに似ているが、山岳地帯の生活食としての顔が強い。毎日食べる、腹にたまる、栄養が分散している。
ネパール料理はインド料理より辛さや油が控えめに感じられることが多い。もちろん地域差はあるが、全体として「スパイスで押す」というより、米と豆と発酵・漬物で日常を作る。モモのようなチベット系の影響も入り、北インドとは別の方向を向いている。
和食で近いのは、一汁三菜に近い感覚だ。ご飯、味噌汁、漬物、おかず。ダルバートは、スパイスを持った山の定食として読むと理解しやすい。
バングラデシュ。川魚とマスタードの国
バングラデシュを理解する鍵は魚と米。ガンジス・ブラマプトラ・メグナの巨大なデルタ地帯で、川魚が料理の中心にいる。インド料理店でよく見るバターチキン的な世界とは全く違う。
味の輪郭を作るのはマスタードオイル、マスタードペースト、青唐辛子、魚のうま味。ベンガル系の魚料理は、クリームで丸めるより、辛味と香りをまっすぐ立てる。魚の脂とマスタードの刺激が合うので、ぶり、さば、鮭のような和食の魚はこの文脈に寄せやすい。
ぶり大根をインド化するとき、南インドのフィッシュカレーだけでなく、ベンガル・バングラデシュ方面のマスタード魚に寄せる選択肢がある。大根は魚の出汁を吸うので、実は相性がかなりいい。
スリランカ。ココナッツと酸味の島
スリランカ料理は、南インドと近い部分を持ちながら、ココナッツの存在感がさらに強い。米とカレー、ココナッツミルク、ココナッツ削り、カレーリーフ、酸味、モルディブフィッシュのような乾物のうま味。全体に香りが明るく、酸味と辛味が立つ。
インド料理店でよく見る北インドのこってりとは全く違う。むしろ和食の魚、酢の物、漬物、だし文化と合わせるなら、スリランカ方向はかなり使える。酸味と乾物のうま味を重ねるので、日本の鰹節や煮干しにも橋がかかる。
お互いをどう見ているか
国境は政治の線だが、料理の線はもっと曖昧で、もっと細かい。ベンガル料理はインドの西ベンガルとバングラデシュにまたがる。タミル料理は南インドとスリランカ北部にまたがる。ネパールにはインド、チベット、中国、山岳民族の要素が重なる。
だから「インド料理と隣国料理」という二分法だけでは足りない。国名より、川、山、海、宗教、交易、移民、言語の方が料理をよく説明することがある。
WA-INDOで使うなら
肉じゃがは北インドにも寄るが、魚の煮付けはバングラデシュ方面、酢の物はスリランカ方面、味噌汁や定食構造はネパール方面に寄せると面白い。インド化とは、全部をバターチキン化することではない。南アジアのどの文脈に接続するかを選ぶことだ。
次に読む
インド国内の南北差は北インドと南インドの料理は何が違うかへ。魚と和食の相性は和食とスパイスの相性理論にもつながる。